京都大学 大学院工学研究科 電気工学専攻 生体医工学講座 生体機能工学研究室

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研究紹介

機能的MRIと脳磁図/脳波の統合解析法の研究

高次脳機能に関与する極めて複雑な脳内プロセスを解明する基礎研究は勿論、臨床における診断支援のための病変や機能評価には、脳のどの部位が如何に連携をとりながら関わっているのかを非侵襲的に計測・解析・イメージングすることが重要である。中でも、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)は神経活動を全頭にわたってボクセルサイズの高い空間分解能で捉えることが可能で、システム神経科学の研究において重要なツールとなっている。fMRIと他の計測法を併用したマルチモーダルイメージングによる臨床応用も試みられてきている。例えば、EEGとfMRIとの併用によるてんかんのフォーカス同定や、神経線維追跡法との併用による精神神経疾患の病態評価などである。本研究室では、fMRIと脳磁図(MEG)、脳波(EEG)の長所を相補的に活かした統合解析によって大脳皮質の複数の部位の賦活を動的にイメージングする新たな手法を開発している。

我々は、fMRIで捕捉されなかったMEG信号源が仮に存在する場合、すなわちfMRIの先験情報が不十分である場合にも時系列推定誤差を低減し安定した信号源活動の推定を可能とするため一般化最小二乗法(GLS)の概念を導入し、fMRIにより捉えられた賦活領域を線形制約条件とする新たなMEG空間フィルタ(ビームフォーマ)を構成した。本手法のシミュレーション並びに実データへの適用によって得られた結果は、fMRIで捕捉されなかった相関の高いMEG信号源の有無とは無関係に、fMRIで捕捉された賦活領域についてボクセル毎の活動時系列が高精度に推定可能であるというロバスト性を示唆するものである。本手法は複数の賦活領域が同時にしかも相関が高く活動した場合においても各賦活領域が拡大・縮小する様子を動的にイメージングすることが可能であり、高次脳機能に関わる複雑な脳神経ネットワーク解析の有用なツールになることが期待される。 fMRI-MEG統合解析結果を動画として表示することにより、複数の皮質部位間の活動の時間関係、すなわち脳内情報伝達のダイナミクスを捉えることが可能である。下図は開発した動的イメージングソフトウェアの表示画面の一例である。

本研究テーマに関連する文献

  • 小林哲生:”fMRI-MEG統合解析と原子磁気センサ型MRI-MEG融合システム~高次脳機能の解明と画像診断の新たなツール~”、高次脳機能研究、新興医学出版社、Vol.30, No.3, pp.378-386 (2010)
  • 大橋、隠浪、鄭、濱田、小林:fMRI-MEG統合解析への線形制約付きアダプティブビームフォーマの適用に関する検討. 生体医工学、Vol.44, No.4, pp.722-727 (2006)
  • 岡田、大橋、鄭、濱田、小林、”fMRI-MEG統合解析法:fMRI非捕捉信号源の干渉抑制による高精度・ロバスト化”、生体医工学、Vol.45, No.4, pp.275-284 (2007)